夕焼けとさくらんぼと味噌ラーメンと

6月の読書感想文「何者」  特大ブーメランの凄まじい衝撃と当事者でいることの意義

もんだいちゃん(@mondai_g)です。

今月はこちら。「桐島、部活やめるってよ」でおなじみ朝井リョウさんの作品です。直木賞受賞作、映画化されて話題になったのも記憶に新しい。

しっかしね、この作品、すごいよ。超怖かった。「登場人物みんな腹立つわー」とか惰性で読んでたら、最後にすごいのきた。

6月の読書感想文「何者」

何者 (新潮文庫)

何者 (新潮文庫)

 

「就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。」Amazonより

 
就職活動中の5人の大学生の日常と、同時進行で進んでくSNSでのもうひとつの日常。登場人物の紹介ページからして既に、Twitterのプロフィール仕立てにされておりあるあるがすごい。

 

特大ブーメランの凄まじい衝撃と当事者でいることの意義

いやー本当大学生の頃の痛々しい自分を思い出して読みながら何度も死にかけたよね。就活、自己PRとか考えてると不思議と何者かにならなきゃいけない気しかしなくて、何者かになりたくて、これが私が何者かになれる最後のチャンスなのではと思って、迷走して迷走して、でも結局何物にもなれなくて。周りのみんなは何者かになれてるのにって、隣の芝が青くしか感じなかった(それは今もだけど)。

何より、終盤の、主人公に対する怒濤の攻めが怖すぎて震えました…もはやホラーレベル…読みながら「もうやめてぇぇぇぇ!!!」ってなった…自分が責められてるわけじゃないのに、急にターゲットが自分になったかのような感覚に衝撃…。
人のことディスってさも自分が何者かであるかのような錯覚に陥って、結局今いるところから一歩も動いてないっていうのは、本当によくありがちで、むしろ積極的に気を付けてないと簡単に「そっち側の人」になってしまう。私もそうだからこそ最後、自分がターゲットになったかのように感じたわけだし、すごく、痛かった。メインステージは3次元なんだから、自分が実際に行動したことが全てだし、当事者であることが全て。かっこ悪くても、全然うまくいってなくても、でも、「やってみた」ことでやっと0は1になる。やってもないのに立派に批判してあたかも自分が何者かになったように錯覚しているのは、ただの慰めでしかない。悲しくて空しいし、もったいない。もちろんたまにはそういう時間も必要かもしれないけど、それはあくまで暇つぶしであって、メインではない。って、分かってはいるんだけどね。

 

SNSで発信される言葉はその人が選んだごくわずかな言葉であって、その言葉の周りに、先にあるものこそが真実なのだけれど、SNSに浸かっているとその「選ばれた言葉」こそがその人そのものであるように思ってしまう。SNSでの言葉なんて所詮、飾りであり暇つぶしでしかないのにね。でも、その人と会ってない時間が長ければ長いほど、直接連絡を取ってない期間があればあるほど、SNSで発信された言葉だけが自分の中で架空のその人を構成してしまって、その存在がどんどん大きくなって、歪んでいくこと、あるなぁ。直接話しをすれば、声を聴けば、一対一でメールをするだけでもすぐ崩れ去るぐらいそれは脆い偶像なのだけど、その偶像が直接その人と連絡することを留まらせて、その人を遠ざけて、あれ、気付いたら何だかひどくこんがらがってるよ?って、なっちゃう。怖いね。

 

*******************************

SNSを通じた自分との付き合い方、そして当事者であるかそうでないかの重要さをずっしり感じた作品でした。楽しいお話ではなかったけど、でも、読んでよかったな。

 

それではまた~

f:id:mondai-girl:20170201164910j:plain(もんだいちゃん)

スポンサーリンク