夕焼けとさくらんぼと味噌ラーメンと

「この世界の片隅に」見たよ 光があるからこそ際立つ闇、それでも悲しいだけでは語れない

もんだいちゃん(@mondai_g)です。

公開開始した頃からいつか見たいと思いつつずっと見れてなかった(こういうの多いな)「この世界の片隅に」。私は元々怖いものがとても苦手で、加えて幼い頃に何気なく図書館で読んだはだしのゲンで「戦争」を表現する作品のトラウマになったこともあり、今まで戦争関連の映画やドキュメンタリーは一切見ずに生きてきました。だって、そんなの見なくても戦争の悲惨さは想像できるし、戦争が良くないってことは分かるしね。しかも怖くて眠れなくなっちゃうし。ああいう作品は戦争の怖さが分かっていない人が見ればいいと本気で思ってたのです。

でも、この映画を見終わった今なら言える。自分は想像力がある、と思っている人にこそ見て欲しい。それは、「想像なんて所詮想像でしかないんだから!」というような戒め的な意味で言ってるんじゃなくて、想像力がある人ほど画面の外のことに思いを馳せる余地があるから。以下多少のネタバレも含むので、見る気のある方はご注意。でもネタバレしてもそこまで問題ない作品かなとも思う。本質はそこじゃないというか。むしろ、この記事を読んで見たいと思ってくれる人、見てくれる人が増えたらいいなぁ。

 

「この世界の片隅に」見たよ

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冒頭からほのぼのする絵と、のんちゃんのちょうどよく間が抜けた可愛い声と方言。決して裕福ではないし不便なこともたくさんあるけれど、家族が幸せに暮らしを営んでいる姿は見ているだけで幸せな気持ちになります。
そんな昭和の日常を見たなかでまず印象的だったのは、「嫁ぐ」ということのすごさ。嫁ぎ先の父母が言った「お嫁さんが来たからもう安心だ、家のことは任せられるねぇ」という趣旨の言葉、何の悪意や遠慮も込められていない、本当に当たり前に、自然に存在しすぎているその言葉は現代に生きる私には強烈でした。家に入った次の日から、まだ日も昇ってないのに一人で水を汲み、ご飯を炊き、(本当は良い人なんだけど)義姉に意地悪言われても、10円ハゲができても、誰にも文句を言わずそこで暮らし続ける。しかも笑顔で朗らかに。すごすぎ…。しかもこれがたかだか70年ぐらい前のことだなんて。もちろん今もそういう風習ですってところも日本の中にはあるのかもしれないけど、でも、いやー社会も人も変わるんだねぇ。その時代に生きたいと言う勇気はないけれど、同じ女性として妻として、本当に逞しいなぁ、かっこいいなぁ、と心を打たれました。

 

光があるからこそ際立つ闇、それでも悲しいだけでは語れない

見ている最中に泣くことはなかったのですが、エンディングが終わり、ディスクをケースにしまうあたりから突然涙が止まらないという事態に。しかも私にしては珍しく、何も言えないでただ泣き続けるという。言葉を口にしようと試みはするものの、なんて言えばいいか分からない。今思えば、悲しさと切なさ、そして悔しさが入り混じった涙でした。その後布団に入っても全然涙は止まらず、目はギンギンの冴え冴え(次の日仕事)。もちろん怖い、という気持ちもなかったわけではないけど、それよりもやっぱり悲しく悔しい。

この作品では、泣いている場面を長回しして涙を誘ったり、怖さを訴えるような直接的な殺傷の場面はほとんどありません。だからこそ冒頭に書いた「想像力」を働かせる余地が大きく、それがこの、後から涙が止まらない現象を生むのだと思います。しみじみ、とても悲しい。

笑える場面やほっこりする場面がたくさんあったのも印象的でした。作品に柔らかさと救いを加えるのはもちろんのこと、それ以上に、戦争をただただ悲しいもので片付けない、悲しみだけで語らせてたまるかというその時代に生きた人たちの強さや意地を感じました。この時代を語るとどうしても、「戦争」という大きな悲しみの影に隠れてしまいがちだけど、ちゃんと私たちの青春はあったんだよ、私たちの幸せと、暮らしはあったんだよ、と。でも、だからこそ悲しく悔しい。こんなに素敵な人たちなら、もっと幸せに生きることができたはずなのに。なんでなの。悔しい。嬉しいこと、楽しいこと、愛しいことがあるからこそどうにもならない悲しみが深くなる。でも、一面で語れない、それが一番真実に近いんだよね。そういう意味で、アニメでありながら生々しい記録のようでもありました。

 

結局、見る前と変わっていないんだけど。ありきたりなんだけど。でもやっぱり思うのは、戦争なんてもう二度と起きないでほしい。今も世界では紛争が絶えない地域もあるけど、どうか一日でも早く終わってほしい。

 

戦中に生きた人はもうほとんどが90代以上で、経験を語れる人が少なくなっているからこそ、これからの時代大事にしていきたいなぁと思える作品でした。いつか子どもができたら一緒に見たいと思います。何か、(私だけかな)戦争をテーマにした作品に良い作品って言うの憚られるんだけど、でも、良い映画でした。とっても。

 

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ちなみに、そんな鑑賞後の私の冴え切った目とフル回転の心を優しく治めてくれた、おおたさんの感想ブログはこちら。

www.hamashuhu.com

映画を見る気があった側なので言われるままにリアタイではUターンしたのですが(すみません)、戦争映画を避けていたって経緯含め、本当「分かる…そうなんだよね…うんうん…」と涙でいっぱいいっぱいになった感情を整理してもらえ、とても有難かった…。素敵な文章で、特にタイトル、とても好きです。

 

 

それではまた~

f:id:mondai-girl:20170201164910j:plain(もんだいちゃん)

 

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